[Vitria AI...
Read More過去5年間、データの持つ”潜在的な価値”への注目は高まり、さまざまな分野でアナリティクス、AI、オートメーションが、その価値を採掘するために導入されてきました。
しかし、この価値にアクセスすることは非常に困難です。データセットはクリーンで、プロセスの中断は許されず、アルゴリズムはその目的に適合している必要があります。さらに、その組織には、この新しい取り組みを理解し、後押しする準備が必要です。
通信事業者のような大規模で複雑な組織の場合、新しいアルゴリズム、分析ツール等を導入する前(つまり、新しい取り組みを始める前の段階)であっても、すでに相当な技術的負債を抱えているため、新規投資の費用対効果に対しては非常に懐疑的です。
そのような会社では、どのプロジェクトで着手できるか、成功の可能性、財務上の改善点(収益の増加、設備投資、運用経費の減少)などを理解する必要があります。
どこにA3ソリューションを配備すべきか?
以下の図を使うと、通信事業者全体で利用可能な財務的価値を検討することができます。
まず最初に、どのようなタイプのアナリティクス、AI、オートメーション(以下A3)が通信事業者のプロセス全体に有用であるかを理解しましょう。
Fig. 一般的な通信事業者におけるアナリティクス、AI、オートメーションの財務的価値
この図の各行では、異なる6つのカテゴリーが示されています:
- 1行目:複雑なデータの理解 – アナリティクスと機械学習は、大規模な、主に構造化されたデータセットを理解するために使用される。パターンを探し、問題を診断し、解決策を予測/処方する。
- 2行目: プロセスの自動化 – インテリジェントオートメーションとRPAにより、通信事業者のプロセスにおける意思決定、オーケストレーション、タスクの完了が可能となる。
- 3行目: 顧客とのやり取りをパーソナライズ – アナリティクスと機械学習により、顧客データを理解し、セグメンテーションを作成し、トリガーを特定し、取るべきアクションを処方する。
- 4行目: 事業計画のサポート – 予測と最適化にアナリティクスと機械学習が使用される。
- 5行目: 人間の能力の増強 – 自然言語処理やテキスト分析などのAIソリューションは、人間の意図や感情を理解するために使用される。顧客や従業員と通信事業者のシステムとのインタラクションの中で使用される。
- 6行目: フロンティアAIソリューション – 通信事業者内で特定の専門的な用途を持つ個別のAIソリューション。
図中のボックスは、A3の追加によって恩恵を受けるであろう各種プロセスを表しています。各列では、これらのプロセスを次のように分けています:
- 通信会社のネットワークとバックオフィスにおけるオペレーション関連
- 各種チャネル
- マーケティング/販売チームに関連するプロセス
- 上記以外
各プロセスの財務的価値はボックスの色で示されています。
この図から得られた主な知見を要約すると以下のことが言えます。:
- 通信事業者にとって高い投資収益が得られるのは、A3 が大規模な運用と資本集約的なプロジェクト(例えば SDN/NFV への移行)を補強するような場合である。
- A3 は、例えばコンタクトセンターのような、大人数が反復的な活動に関与するユースケースでも大きな利益をもたらしている。ただし、少人数のチームでのユースケースでは、期待されるリターンは比較的控えめとなる。例えば、注文処理チームの人数を40人減らし、12万ドルのコスト(給与、スーパーバイザーの給与、施設・建物のコスト配分を含む)をかけても、400万ドルにしかならない。これでも十分な金額ではある。ただし、ネットワーク上にA3 を導入した場合の 1,000万ドルや1億ドルの節約 には遠く及ばない。
- ビジネスケースが控えめな場合は、組織の他の部分で発生する利益も併せて考える必要がある。例えば、ネットワーク・オペレーション・センターに新しいアラーム管理ソリューションを導入した場合、コンタクトセンターへの問い合わせが減ることによる下流の財務的価値などである。
- この図に見られる一般的な傾向として、A3による問題解決が適切なユースケースと、A3による問題解決が適さないユースケースがある。例えば、大規模なデータセットがあり、そのデータセットが急速に変化したり、そのデータセットから洞察を素早く取り出す必要があるユースケースでは、ルールベースのアナリティクスより機械学習(ML)が適している。
- しかし、この図が示すA3の利用が望ましいユースケースであっても、少なくとも短期的には、それが必ずしも良いリターンを生み出すことを意味しない。図の最下段には、AIを使用した新しくインテリジェントなソリューションが含まれているが、これらはROIがより限定的で非常に特殊なソリューションである。
A3の財務的価値を理解する
財務的価値を理解するために、A3による恩恵の大きなボックスを1つ選んでみます。上図の左上隅に「Assurance」と表示されているこのボックスは、アナリティクス、機械学習、オートメーションを多用する必要がある良い例です。
財務的価値を計算するには、3つの質問をします:
- このボックスの中で解決すべき問題は何か?
- ここに対して、A3はどのようなソリューションを提供できるか?
- それぞれのソリューションにどれだけの財務的価値があるのか?
Fig. A3が提供するソリューション
図の行では、幅広いユースケースを、人間がネットワーク上のイベントを追跡したり、顧客体験をモニターしたりすることを可能にする、より単純な要件(説明とラベル)に分割されています。シンプルなA3の使用は、図の下に行くほど複雑になります。
診断のためには、アナリティクスと機械学習が必要で、さらにネットワーク上の未来の状態を予測する必要があります。問題を検出し、推測された問題を修正するためには、自動アクションを実行するクローズド・ループ・ルーチンが必要になります。
A3がAssurance領域で、どのような用途で利用されているかを把握することで、通信事業者はその価値を算出することができます。これらのユースケースが、収益にどのような影響を与えるかを考慮する必要があります。
Assurance に関する、適切な質問は以下のようなものです:
- ネットワークやサービス・オペレーション・センターでの効率を上げることができるか?
- フィールド・サービスの対応件数を減らせるか?
- ネットワーク機器への出資額を削減できるか?
ひとたび決定がなされれば、実際の財務的価値を割り出すという困難な作業に取り組むことができます。試算するには、典型的な通信事業者のネットワークおよびそのチームに関する一連の仮定(例えば、さまざまなチームの人数やネットワークへの年間支出など)が必要になります。
また、組織全体の利害関係者がどのように価値が生み出されるかを理解できるように、計算を合理的にシンプルに保つことも重要です。
今回紹介したようなアナリティクス、AI、オートメーションの展開は、これから成熟していく分野です。
アナリティクスやロボティック・プロセス・オートメーションのような、一部の用途では、すでに成熟しており、その価値も十分に理解されています。
しかし、アナリティクスや機械学習のより複雑で規範的な用途のほとんどでは、理論的には理解されていても(つまり、通信事業者は、その潜在的な価値を知っているかもしれない。)、初期のパイロットや小規模なPoCの範囲を超えて、実際には実装されていない段階にあります。
より広範で意欲的な実装には、よりクリーンなデータとプロセス、成熟したアルゴリズム、加えて、より多くのオーケストレーション機能が必要となるでしょう。
そして多くの場合、それに付随する文化的・組織的な変革プログラムを実施する必要があり、これにも手間がかかります。通信事業者にとって、これらは2年から5年を要する活動となるでしょう。